あらすじ
地方都市で事務職として働き、一人暮らしをしている28歳の美春。最近、実家の母から「家業を手伝ってほしい」「そろそろこっちに戻ってきなさい」という連絡が頻繁に来るようになっていた。親の期待に押し切られる形で、連休に合わせて実家へ帰る新幹線の切符を買ってしまった美春だが、出発の前夜、初秋の冷たい雨が降る駅前で足を引き留める。自動販売機の青白い光に照らされる中、雨音がほんの一瞬だけ遅れて聞こえるような不思議な感覚にとらわれ、彼女は自分の本当の気持ちと向き合う。親の望む人生をなぞるのか、それとも自分の場所をここで作っていくのか。冷たい雨の夜、美春は手の中の小さな切符を見つめ、ひとつの決断を下す。