あらすじ
四十七歳。ツケは二十年分。残った力は、全盛期の三割。
この国の英雄は、叙勲の日に「いちばん強かった自分」を切り離し、国へ納める。
〈残影〉と呼ばれるその写しは齢を取らず、傷を負わず、命じられた場所に立ち続ける。
かわりに本人は、その強さを永久に失う。
十年前、国境の村で残影の英雄〈鉄雨〉に救われたイーリス・ロウレンは、その背中を追って十八歳の見習い騎士になった。
赴任した辺境の街ヴェルナで出会ったのは、昼から酒を飲み、約束をすっぽかし、酒場にツケを溜める四十七歳の男、ガレス・ヴェイル。
けれど、そのみっともない男が見せた一歩は、イーリスが十年写し続けた英雄の剣と寸分違わなかった。
やがて不朽の英雄〈鉄雨〉は国境の持ち場を離れ、武器を奪いながら南下を始める。
国からガレスに届いた依頼は、ただ一つ。
「あなたの残影を止めるために、死んでください」
憧れた二十七歳の偶像と、二十年を生きた傷だらけの本物。
十八歳の見習い騎士は、衰えることも、負けることも、逃げることも知らない英雄を止めるため、全盛期の三割しかない男と戦場へ向かう。
これは、失われた強さを取り戻す物語ではない。
弱くなっても、まだ誰かを助けられると知る物語。
剣と魔法の異世界ファンタジー/英雄後日譚/年の差師弟。
全32話・約9万字で完結。最後は二人とも報われます。