あらすじ
王立学院を卒業し、五年ぶりに故郷へ帰ってきた伯爵令嬢エレノア。
彼女を迎えたのは、目の前で倒れる正門、雨漏りを受け止める屋根の桶、閑散とした市場、そして金貨二千八百枚もの借金を抱えた領地だった。
しかも父である伯爵は、帳簿の余白に花を描き、砂糖菓子の予算だけは絶対に守ろうとしている。
「お父様。慈悲は予算に計上できません」
「では、菓子は必要経費にできないか?」
「できません」
領地を立て直すため、エレノアは王都の屋敷や馬車を売却。徴税時期を見直し、水車を使って採石場を再開させ、羊毛の加工や織物産業を育て、冬の学校まで開設していく。
ところが、新しく造った水車は一日で故障。食堂には「壊れた水車亭」という不名誉な名前がつき、地味な灰色の布は商人の手によって、なぜか「北東貴族の伝統色」として売り出されてしまう。
失敗は罰するのではなく、次へ生かす。
商人とは争わず、互いに利益が出る仕組みを作る。
領主一人ですべてを決めず、人々が自分で動ける土台を整える。
これは、誰かを追放したり破滅させたりすることなく、知恵と対話と少しばかりの笑いによって、赤字領地を立て直していく有能令嬢の物語。
ただし、借金を完済した後も、父の砂糖菓子を巡る予算争いだけは終わらない。