あらすじ

美大をドロップアウトし、居間の畳の上で祖母・敏子が倒れているのを見つめていた葛西蓮。救急車が去った静まり返った家で、蓮は祖母が遺した赤い生地を手に真夜中の辻へ向かう。そこで町工場を営む豪太から投げ捨てられた工業用の針を拾い、初めての前掛けを縫い上げたその日から、街の端の小さなお地蔵様を巡る手仕事と行為の連鎖が動き出す。 壊れかけた家庭に怯える少女、過去の記憶に囚われた町内会長、差別に直面する外国人の青年、そして宗教を冷笑しながらも灯籠を置く男。言葉や思想を交わさぬまま、物と傷と手のひらの温度だけが人から人へ渡っていく。祈りでも救済でもなく、ただ行為だけが街の輪郭を静かに繋ぎ直していく群像劇。

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小説を読もう2026/09/06
  • 現在の作品『辻の地蔵の、おすそわけ』