あらすじ

「一年、うんと可愛がらせてもらいますでな」

十九歳の透子が嫁いだのは、山あいの村・御山内。

贄嫁として。一年後の秋祭りに、オヤマサマへ捧げられるための嫁だった。

両親を亡くしてから八年、透子はいくつもの家を回ってきた。どこでも親切にされ、どこでも必要とされなかった。だから覚悟はしていた。冷たくされても構わない。物として扱われてもいい。八年ぶりに、自分に使い道ができたのだから——。

けれど、車を降りた透子を待っていたのは、村の全員が腰から折る深い礼だった。
当主の鎮ヶ谷灯真は、彼女の鞄を壊れ物のように土間へ置いた。
膳に出された栗ご飯は、誰にも話したことのない、亡き母の味だった。

大事に、大事にされる。
村の誰ひとり、例外なく。

こんなに幸せでいいのだろうかと思うほど、透子は満たされていく。

——なぜ、私だったのか。
——なぜ、位牌には戒名しかないのか。
——なぜ、村を出る道は、一年中工事中なのか。

答えの手前で、透子はいつも足を止める。もう、この家を疑いたくない。ここが、初めて自分を必要としてくれた場所だから。

そして、残された時間は一年しかない。

「愛してるって、あなたの気持ちですか。それとも、役目ですか」

その問いに、灯真は答えられなかった。

三百年続く因習と、嘘ひとつない溺愛。
その二つが同じものだと知ったとき、透子の一年が動き出す。

和風因習ホラー×溺愛。全110話予定。

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アルファポリス
アルファポリス2026/09/05
  • 現在の作品贄嫁は今日も愛されている