あらすじ
豊橋のどこかに、巨大な廃墟団地がある。
所在のわからない噂を追うライターのもとに、十一秒間の映像が届いた。灰色の外壁、錆びた手すり、黄色いカーテン。その裾を留める白い洗濯ばさみを、彼は知っていた。
それは、県外で一人暮らしをする母親の窓だった。
取材依頼メール、聞き取り音声、未公開映像、家族の記録。資料を照合するにつれ、廃墟の外観と、そこに暮らす人々の日常が、静かに食い違い始める。
建物の所在地は不明。三つの窓の居住者は確認済み。
「帰宅した」という一文を訂正するまでの、私的調査報告。
※実在の都市伝説に着想を得たフィクションです。