あらすじ

「神崎。お前の経歴、改めて見るとめちゃくちゃだな」

運送、製鉄所、建設、クレーン、製造、品質管理、営業――。

四十五歳の会社員・神崎鉄平は、何度も職場を変えてきた。

一つの仕事を極めたわけではない。
履歴書を見れば、そこにあるのは一貫性のない職歴ばかり。

「結局、お前は何の専門家なんだ?」

上司からそう問われても、鉄平には答えることができなかった。

そんな彼に、突然一枚の辞令が渡される。

「出向だ」

「今度はどこです?」

「異世界だ」

日本と偶然つながった異世界・エルディア王国。
そこでは勇者の派遣が求められていた。

しかし調査してみれば、王国を苦しめていたのは魔王でもモンスターでもない。

赤字続きの商会。
事故の絶えない鉱山。
崩れかけた街道。
届かない食料。
老朽化した設備。
技術者不足。
品質不正。
官僚主義。
既得権益。
そして、誰も変えようとしなくなった古い仕組みだった。

剣も使えない。
魔法も使えない。
特別なスキルもない。

鉄平にあるのは、転職を繰り返す中で身につけた「現場経験」だけ。

トラック運転手だった経験から物流を立て直し、製鉄所で学んだ保全の知識で鉱山事故を防ぎ、施工管理の経験から道路や橋を造る。

クレーンに乗っていた経験は異世界の巨大工事へつながり、タクシーで培った会話力は人々の本音を引き出す力となる。

製造現場で学んだ改善、品質管理で身につけた原因分析、営業時代に覚えた「売る前に相手の話を聞く」という姿勢。

日本では「まとまりがない」と思っていた職歴が、異世界では一つずつ意味を持ち始める。

だが、鉄平は万能ではない。

政治では敗れ、金融では知識不足を痛感し、自分が進めた効率化が思わぬ危機を生むこともある。

それでも彼は、専門家より上に立とうとはしない。

物流の専門家。
職人。
技術者。
農民。
商人。
官僚。

それぞれの知識を理解し、人と人、仕事と仕事をつないでいく。

やがて小さな商会の再建は、鉱山、街道、工場、王国、隣国、そして大陸全体を巻き込む巨大な改革へ。

そして鉄平は気づいていく。

自分の専門とは、何か一つを極めることではない。

異なる専門を持つ人々をつなぎ、自分がいなくても仕事が続いていく仕組みを残すことなのだと。

これは、転職ばかりだった一人の会社員が、バラバラだった人生経験を武器に異世界を立て直していく物語。

そして最後に、

「お前は何の専門家なんだ?」

という最初の問いに答えを見つけるまでの、異世界お仕事ファンタジーである。

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アルファポリス
アルファポリス2026/08/30
  • 現在の作品『異世界に派遣された転職だらけのサラリーマン ~剣も魔法も使えませんが、十の職歴で潰れかけの王国を立て直します~』