あらすじ
「営業利益を三倍にしろ。できなければ閉園だ、この税金泥棒ども」——
病気を患い、家庭も、国内トップ種苗メーカーの花形である「ブリーダー」の職も失った田中煌一、三十六歳。
すべてを手放し、逃げ帰った故郷で彼が再就職したのは、来園者もまばらな、さびれた大阪府立の植物園「花と緑の文化園」だった。
鉛のように重い身体を引きずり、ただ黙々と作業をする日々。けれどそこには、賑やかで少しおせっかいな人たちがいた。
元気すぎる広報、
緑髪のカフェマスター、
体育会系の栽培員、
渋くてダンディな栽培員、
植物オタクの学芸員、
ザ・大阪のおばちゃんという感じのパートリーダー。
そして、ある夏の夕暮れに出会った、透明感のある一人の美少女。
ようやく見つけた静かな居場所に、府から突きつけられたのは、あまりに理不尽な最後通牒だった。
閉園まで、時間がない。
これは、枯れかけた場所で、もう一度花を咲かせようとする人々と、少しずつ息を吹き返していく一人の男の物語。
植物とコーヒーと少しの憂鬱と。
大阪の片隅の植物園から始まる、再生のお仕事群像劇。