あらすじ
店のシャッターを下ろすガラガラという音が、通りに最後の挨拶を告げた。午後七時、閉店。この町で四十年続いた母の洋品店「メゾン・ユイ」は、今日でその歴史に幕を下ろす。私は埃っぽい空気を吸い込みながら、感傷に浸る間もなく、店内の片付けに取り掛かった。残された在庫を段ボールに詰め、空になったラックを壁際に寄せる。新しい仕事への移行準備に追われる日々で、母の残した店を感傷なく整理することが、私に課せられた最後の仕事だった。 「すみません、まだ、開いてますか?」 突然、ガラスドアをノックする音がした。シャッターは完全に閉まり、ドアには「閉店しました」の札が掛かっている。誰だろう、と訝しみながら振り返る