あらすじ
中学で酷いいじめを受け、心機一転のため、多摩の山奥にある父の故郷へ戻ってきた高校一年生・久慈直人。
懐かしい土地を歩くうち、直人は小学生時代に友人たちと遊んだ沢へたどり着く。そこで蘇ったのは、徘徊老人として疎まれていた老婆の叫びだった。
「はよ上がれ! 追いつかれる! 引きずり込まれる!」
あの日、友人の亮介は沢で溺れた。だが助かったはずだ。事故のあとも一緒に遊び、卒業式まで過ごした記憶が直人にはある。
ところが亮介の家を訪ねた直人は、彼があの日、本当に死亡していたことを知らされる。
では、その後も直人と遊んでいた少年は誰だったのか。
沢へ戻ると、亮介が小学六年生の姿のまま待っていた。
還暦を過ぎた者だけが認識できる、人型の黒い裂け目。その奥からは、若くして死んだ者たちによる、生き残った者への恨み節が今も滾々と湧き続けている。
その怪異の名は、カチャンさま。
そして去年還暦を迎えた父には、もうその姿が見えていた。