あらすじ

三年前の事故で死んだはずの恋人・望月榛名は、いまも僕の部屋で鍋を作っている。触れられるし、脈もある。  だが、彼女が触れたものは、他人に見られた瞬間に「触れられていなかったこと」になる。財布のレシートは三十七枚すべてが二人分で、店員は誰も二人目を覚えていない。  やがて僕は知る。三年前のあの実験は、「箱の中の観測者と、外の観測者が、両立しない事実を持つ」ことを実証するものだった。そして箱の壁を設計したのは、僕自身だった。  事実は、複製の多いほうが勝つ。彼女を助けようと証明を重ねるほど、彼女は薄くなっていく。国家の「事象整合室」は、否定ではなく記録によって、少数派の事実を淘汰していく。  多数決に負け続けた男が、最後にたどり着いた方法は——観測しないことだった。  量子力学の「ウィグナーの友人」を軸に据えた、現代SFミステリ。全六十話。

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カクヨム
カクヨム2026/09/05
  • 現在の作品箱の外側で、君は死んでいる