あらすじ
「貴様は森の魔物と通じ、領民を神隠しに引き渡した大罪人だ!」
第二王子アルヴィンによる、証拠なき断罪。異母妹ロゼリアの儚げな涙。公衆の面前で婚約を破棄され、「神隠しの森」への追放を言い渡された令嬢セリカ。
だが彼女は取り乱すことも、反論することもしなかった。
(言っても、あなた方には聞こえないもの。あの鈴の音が。)
前世は日本の神社で育った巫女。すべての記憶と、冷静な観察眼、そして少しの脱力癖を持つセリカには、他の誰にも聞こえない音が聞こえていた。森の奥から響く、りん、りん、という鈴の音――それは魔物の誘いなどではなく、神隠しに遭った民たちの「助けを求める声」だったのだ。
音を光として視るギフト【鈴音感応】を頼りに、セリカは忠実な侍女ミラと共に死の森へと踏み込んでいく。そこで出会ったのは、三十年間ひとりで鈴を鳴らし続けた老兵、そして数百年にわたって孤独に森を守り続けてきた、寂しがりの守護者だった。
聞こえなかったあなた方に、真実の鈴を鳴らしてあげる。
捨てられた令嬢が、誰も気づかなかった声を掬い上げ、握りつぶされた真実を白日の下に晒す。孤独をほどく、優しくて温かな「ざまぁ」の物語。
もう誰も泣かせない――その鈴の音の続く先に、彼女の本当の物語が始まる。