あらすじ
王立アカデミーの若き修復士イネッサ・ファルクは、国家機密に関わる祭壇画の修復中、毒殺未遂の首謀者として仕立て上げられ追放される。
濡れ衣を着せたのは、彼女の才能に嫉妬した恩師と、絵画の裏に隠された不正取引をもみ消そうとする貴族たちだった。
「死刑を免れたければ、北方のアッシェン館へ行け」
送られた先は、代々の領主が謎の狂死を遂げる「呪われた灰色の城」。
死相の浮かぶ当主アルヴィド公爵と対面したイネッサは、彼が怯えているはずの「呪い」の正体を、一瞥で見抜いて嘲笑する。
「呪い? 笑わせないで。あなたの肺と脳を蝕んでいるのは、歴代当主が飾らせた肖像画の『エメラルド・グリーン』――亜ヒ酸銅の粉末よ。オカルトに逃げて死を待つなんて、随分とおめでたい頭をしているのね」
死を恐れないイネッサの冷酷な知性と舌鋒に、アルヴィドは薄く笑った。
「面白い。神にも毒にも見放された俺の命、貴様にすべてくれてやる。……その代わり、俺を殺そうとした親族と、貴様を陥れた王都の豚どもを、一匹残らず地獄の底へ引きずり降ろす手伝いをしろ」
愛ではなく利害、情熱ではなく冷徹な打算。
二人は「修復士と依頼人」の皮を被った【共犯者】となり、城に潜む暗殺網と王都の権威を、科学的証拠と毒の論理で容赦なく解体し始める。
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【主な登場人物】
イネッサ・ファルク(23歳)
元・王立アカデミー主席修復士。合理主義を極めた冷笑家。
恩師とパトロンに冤罪を着せられ辺境へ追放された。
化学知識と解剖医のような冷徹さで絵画の欺瞞と毒を暴く。
アルヴィド・フォン・アッシェン(27歳)
北方黒鉛鉱山を治める「灰被り公爵」。
親族の謀略と重金属中毒により狂死を待つ身だったが、内心では自分を陥れた世界を道連れに破滅させようと企む冷酷な現実主義者。