あらすじ
「狐など、妹の膝でも丸くなる。狐の世話係を妃にはできん」
婚約者の王太子ロデリクは、妹セレストの手を取ってそう言った。妹は袖についた狐の毛を払った。
「服につくわ」
私はオレリー、二十五歳。王家の狐守を十年務めている。
番は、白狐が決める。女神の使いの白狐が二人の間で丸くなれば番、丸くならなければ縁が無い。王家の婚礼も村の婚礼も、狐が丸くなって初めて立つ。王太子は、狐舎へ一度も来たことがない。
「では、狐たちに選ばせます」
王都の白狐は三百匹。妹の膝には、一匹も来なかった。三百匹が、私の後ろについて国境まで歩いた。一番小さいふくだけが天邪鬼で、王太子の靴の上で寝ている。
国境には、隣国の王ヴァルテルが立っていた。十年、狐が一匹も丸くならなかった王だ。手には、狐の干し魚。
「庭が空いている。狐守ごと、来い」
三日目の朝、隣国の王宮の庭で、白狐が千匹、私と王の間で丸くなった。王都の婚礼は、一件も立っていない。
「狐を戻せ。王都の婚礼が、一件も立たん」
「番は、狐が決めます」
大陸の婚礼が、狐の毛の向きで動くまでの三日の話。