あらすじ
名家の娘でありながら、家族から顧みられることなく育った透子は、自分の名前を呼ばれることもないまま生きてきた。
そんな彼女に突然告げられたのは、帝都随一の名門・南雲家への嫁入りだった。
相手は軍府に所属する若き少将にして陰陽師当主、南雲宵。
類まれな術の才と美貌を持ちながら、性格は最悪。陰陽寮の笑う悪鬼と呼ばれる彼は、穏やかな笑顔で毒を吐き、初対面の透子にこう言い放つ。
「好きになったら離婚だよ」
形式だけの夫婦──そのはずだった。けれど宵だけは、誰も呼ばなかった透子の名前を呼んでくれた。
少しずつ距離を縮めながら、自分の居場所を見つけていく透子。一方で宵もまた、短命の宿命を背負う南雲家の当主として、人を愛することを恐れていた。
そんな中、帝都では花嫁ばかりを狙う不可解な失踪事件が相次ぎ始める。事件の裏にあったのは、女性たちから名前を奪い、家に従属させる古い呪い――婚姻縛り。
しばらくして透子自身も呪いに囚われ、宵は彼女を救うため禁じられた夜へ足を踏み入れる。
これは、名前を呼ばれなかった少女と、愛されることを恐れた青年が、互いの名前を呼び合うようになるまでの物語。