あらすじ
公爵令嬢リリアーナには、前世の記憶がある。
とはいえ、料理の知識もなければ、画期的な発明もできない。
魔法の才能も人並み。
ただ一つ、彼女には少々困ったところがあった。
貴族特有の、遠回しな嫌味がよく分からないのである。
「まあ。ずいぶん素朴なドレスですこと」
「ありがとう! 軽くてとっても着やすいのよ!」
「……そう」
「お勉強がお好きなのね。殿方には退屈されませんこと?」
「心配してくれてありがとう! でも殿下は私より物知りだから、毎日すごく楽しいわ!」
「…………そう」
嫌味を言っているはずなのに、なぜか全部ほめ言葉として受け取られてしまう。
しかもリリアーナが嬉しそうに周囲へ話すものだから、嫌味を言った側は今さら「そんな意味で言ったのではない」とも言えない。
そんな日々が続くうちに、なぜかリリアーナの評判は上がり続け、彼女を笑いものにするはずだった令嬢たちは、どんどん後に引けなくなっていく。
けれどある日の王宮園遊会。
とうとう、ほめ言葉には変換できないほど露骨な悪意を向けられたリリアーナは――。
「ああ。これはさすがに、嫌味なのね」
初めて、笑顔を消した。
これは少しだけ空気が読めない転生令嬢が、悪意だらけの社交界をなぜか善意で塗り替えてしまうお話。