あらすじ
リゼット・オルブライトの婚約者、シリル・ヴェルネールは、誰もが羨むほど完璧な男性だった。公爵家の嫡男で、容姿端麗、成績優秀。礼儀正しく浮気の心配もなく、何よりリゼットのことを心から愛してくれている。ただし、一つだけ大きな問題があった。その愛が、あまりにも重すぎるのである。
誰と出かけるのか、何時に帰るのか。友人との外出には送り迎えをしたがり、ほかの男性と話していれば、いつの間にか隣にいる。「心配だから」「大切だから」「愛しているから」と言われるたびに我慢してきたリゼットだったが、ある日の夜会をきっかけに、このまま結婚したあとの生活を想像してしまう。
「婚約を破棄してください」
嫌いだからではない。むしろ、好きだからこそ、これ以上は耐えられなかった。どれほど深く愛されていても、そのために自分の自由を差し出すことはできない。愛されることを望む前に、まず一人の人間として自由でいたい。そうしてリゼットは、幼い頃から当たり前のように続いてきた二人の関係に、自ら終止符を打つことを決めた。