あらすじ

【あらすじ】 「この子は、銀貨六枚だ」 「……安いです」  値をつけられていたのは、その娘自身だった。  十六歳のミナは、栗鼠の獣人。銀貨六枚で売られる、その日。  自分の値段に文句を言っていたら、通りすがりの行商人が、六枚を払って言った。 「六枚は、あたしが払った額。あんたの値は、十二枚」  山羊の獣人ネル。値を下げない女。連れて行くとも言わず、借りだけ残して歩き出す。  ミナは追いかけた。生まれて初めて、値を言い直してもらったから。  境を越えるには、二人分の署名がいる。ネルは字が書けない。  だから商会の代表は、ミナになった。  その日の夕方。関所の露店で、ミナは一枚の護符を見る。  聖国が発行する、病除けの紙。銅貨二枚。南では一家に一枚あるという。  そこに描かれた女の顔を、ミナはどこかで見た気がした。  やがて一行に、聖国騎士団のユーディトが加わる。  偽物の護符を取り締まり、本物を売り歩く女。  紙の真贋は見分けられないが、腕っぷしだけは常識外れ。  紙を見るのはミナ。どこから来たかを読むのはネル。押さえるのはユーディト。  三人がかりで一枚の紙を隅々まで調べ上げる、偽物を見分ける商会の話。  ただし、その偽物に描かれているのは—— 【舞台】 南の聖国、どの国のものでもない「境の外」、そして北の帝国。 聖国が発行する護符は、南では一家に一枚ある聖なるもの。境の外ではただの商品、銅貨二枚。 北には、まだ一枚もない。 【登場人物】 ミナ(16・栗鼠の獣人) あらゆるものに値をつけずにいられない。書類上の商会代表。字が書ける ネル(山羊の獣人・年齢不詳) 値を下げない行商人。説明しない。字が書けない。角が折れている ユーディト(人間・聖国騎士団) 偽物の護符を改め、本物を売る。紙は見分けられないが、腕っぷしは常識外れ 男 名乗らない使者。折り目のついた古い証文を持っている ラウズ 男の背後にいる者。第1巻では、名前しか出てこない 【この巻の到達点】 借り、銀貨十二枚のうち、返せたのは一枚だけ。残り十一枚。年に二十枚返せるとして、十一年。 三人はまだ、誰の顔についても何も言っていない。 【商いと事件】 器と鏡、塩、冬支度の大口。そして毎話、偽物の護符が一枚ずつ。 工房に届くのは、この巻で一度だけ。 【二巻以降】 北へ入る。護符はまだ、ここには一枚もない。 そして三人のうち一人だけが、自分の顔が刷られていることを知っている。 【補足】 獣人は、人の姿に獣の徴が残る程度です。本作では、角・耳・尻尾・瞳孔・模様の有無を記述しました。

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カクヨム
カクヨム2026/09/05
  • 現在の作品わたしの値は、銀貨十二枚 〜姐さんの顔は、銅貨二枚〜