あらすじ

芸術は戦場だ。創作は商売だ。 世間は「創作者(クリエイター)」という言葉に夢を見る。好きなことを仕事にした人。才能を燃やして生きる情熱の人。SNSでバズり、ファンに愛され、キラキラと作品を世に放つ人——。 現実は違う。 締切と発注書。他人のIPへの気遣い。クライアントの無茶な修正指示。単価の交渉。名前の出ない仕事。SNSの営業。トレンドの分析。そして、人気を得るためには作品だけでなく自身の「見せ方」にまで気を配らなければならない。そこにあるのは、創作者としてあり続けるためのむき出しの欲望。創作者とは、夢で出来た人種ではない。泥を飲み続ける生き物だ。 舞台はゲームシナリオの受託会社。主人公・黒井は、大手を干されて流れ着いた元エースシナリオライター。彼の口癖は「エンタメとは円タメ——金のために創るものだ」感動も涙も発注書どおりに納品する。夢を語る依頼人の原稿には、容赦なく赤を入れる。その言い方は最悪だが、彼が赤入れした原稿は必ず売れると評判。 そこに配属された新卒の女性、遠藤 縁(えんどう ゆかり)は、正反対の理念を持っていた。「エンタメは縁タメ——誰かの心に届いて、目に見えない縁を築くためのもの」彼女は損得を知らない。ただ、書いたものの先にいる誰かとの縁を信じている。黒井が捨てたものを、まだ捨てていない女性。 円タメと縁タメ。二つの理念は、受託の現場に持ち込まれる仕事のたびに衝突する。どちらかが正しいのではない。どちらも、泥の中で書き続けるための、生存法だ。 そして受託会社には、創作の現場で今まさに燃えている論争が、「案件」として毎話持ち込まれる。二次創作は文化か、寄生か。ゲーム実況は宣伝か、タダ乗りか。VTuberの人気は企業のおかげか、本人の実力か。AIの書いた感動は偽物か。長期ヒット作は、なぜ失速するのか——。答えの出ていない問いに、黒井は円タメの論理で赤を入れ、遠藤縁は縁タメの目で抗う。 これは、創作の夢を描く話ではない。 好きなものだけでは、生きていけない。 でも、好きなものじゃないと、生きていけない——そんなクリエイターの物語 登場人物 ・黒井(くろい) 大手ゲーム会社を干され、受託会社に流れ着いた元エースシナリオライター。「エンタメとは円タメ——金のために書くことだ」と公言する現実主義者。創作の夢を語る人間を嫌う偏屈な男。 ・遠藤 縁(えんどう ゆかり) 新卒のシナリオライター。「エンタメは縁タメ——誰かの心に届いて、目に見えない縁を築くためのもの」と信じ、黒井に真っ向から食ってかかる。楽観的で人懐こく、損得を知らない。 ・園城 穂村(えんじょう ほむら) 業務委託の若手天才シナリオライター。賞や編集部に作品を落とされ続け、SNSのバズで世に出た経歴から、「エンタメは炎タメ——燃えれば勝ち」と権威を冷めた目で見ている。 ・岸田(きしだ)社長 受託会社の社長。黄色いスーツがトレードマーク。豪快で調子がよく、会社のためなら無茶な案件も拾ってくる商売人。黒井とは旧知の仲で、彼を会社に引き入れた張本人。

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カクヨム
カクヨム2026/09/05
  • 現在の作品黒井の赤入れ