あらすじ
福島第一原子力発電所に残された大量の燃料デブリ。
それを取り出したあと、数十年、さらにその先の未来まで、どう安全な状態に置き続けるのか。
明石でタクシーを走らせながら独自に研究を続ける松浦慶喜は、電源や継続的な人間の操作への依存を可能な限り減らし、燃料デブリを長期にわたって受動的に安定化する構想――「INIC」を研究していた。
行政書士、探偵、作家、研究者。そしてタクシー運転手。いくつもの顔を持ちながら、本人はいつも安物の紺色のタクシー制服姿。そんな松浦の研究は、まだ一本の論文にすぎなかった。
ところがある日、西朝鮮から発射された一発の弾道ミサイルが予定軌道を外れ、淡路島へ落下する。
偶然なのか。
操作ミスなのか。
それとも――。
誰にも読めない未来を前に、論文の中にしか存在しなかったINICが、静かに現実へ動き始める。
これは、燃料デブリを「取り出す」物語ではない。
取り出したあと、どう未来へ残すかを考える物語である。
※本作品はフィクションです。作中に登場する人物、国家、団体、企業、政府・行政機関、研究機関、軍事・治安組織、事件その他の設定は創作によるものであり、実在する人物・組織等とは関係ありません。