あらすじ
新婚旅行先のモール火災。相沢孝則は妻の明奈を逃がすため、炎の中へ戻った。
「必ず戻ってくる。待っていてくれ。」
明奈は待った。避難場所で、一晩中、翌日も。
しかし戻ってきたのは、遺体安置所での「夫の死」だった。
背格好、服装、身分証、そして明奈のバッグ。すべてが孝則を示していた。
明奈は遺体を確認し、帰国後、両親たちの説得により離婚届を提出した。
「若いのだから、新しい人生を歩んでほしい」それが、彼女への愛だった。
それから数ヶ月。
明奈は新しい仕事を始め、少しずつ日常を取り戻していた。
「孝則はもういない」そう思い込むことで、彼女は前に進もうとしていた。
しかし遠い異国の病院で、一人の男が目を覚ます。
身元不明の被災者として数ヶ月を過ごしたその男は、生きていた。
名前は相沢孝則。明奈の、元夫。
彼が知ったのは、自分が「死亡扱い」であること。
そして、妻が既に離婚手続きを完了させたことだった。
孝則は知る。明奈が新しい人生を歩み始めていることを。
だからこそ、彼は決断する彼女に連絡しない、と。