あらすじ
「通信設備は外注で足ります。網代さん、あなたの十五年ぶんの仕事は、コストなんですよ」
大手クラン『天穹』設備課、網代亮、三十六歳。仕事は、ダンジョンの中に電波を通すこと。
深層は圏外だ。魔素が電波を食う。だから探索者は深く潜るほど連絡が取れなくなるし、配信も途切れる。その圏外を一階層ずつ潰して回るのが、彼の仕事だった。誰も見ていない場所に一人で降りて、機械を置いて、帰ってくる。十五年、それだけをやってきた。
契約解除を告げられたその会議室にも、電波は届いていた。三年前に、彼自身が通した回線だ。
個人事業の届出を出し、中古の中継機を担いで、また一人で降りる。誰にも頼まれていない。ただ、圏外があるのが気持ち悪いだけだ。
──ある夜。有名配信者の生中継が、誰も入ったことのないはずの第四十七層から届いた。
「え、なんで。ここ、電波入るんですけど」
掲示板が動きはじめる。協会が公表している人類の踏破記録は、第四十二層。
では、その五層下に立っているアンテナは、いったい誰が置いたのか。
戦えない男の設置記録が、人類の踏破記録を追い抜いていく話。
※全40話・完結まで執筆済み。毎日2話更新、18日で完結します。ハッピーエンドです。