あらすじ
三年間付き合った恋人から、突然の別れを告げられた二十六歳の波瑠。
店を出た彼女を待っていたのは、冬の夜空に浮かぶ大きな赤い月だった。
道ゆく人々が感嘆の声を上げて見上げるその月は、今の波瑠にとってはただ不気味なものにしか見えなかった。
混雑した駅を避けるようにして逃げ込んだタクシー。
静かに走り出した車内で、ふとラジオから流れてきたのは寂しげな曲だった。
この曲をきっかけに始まった、見知らぬ運転手との対話。
その小さな時間は、彼女の心に何かを残していく。
失恋した冬の夜、最後に波瑠が見上げた月は──