あらすじ
広島で暮らす大学生、宮浜つむぎ(みやはま つむぎ)。
裕福な家庭に生まれ、小学校受験から始まった一貫校での学生生活を経て、地元でも有名なお嬢様大学へ進学した。
何不自由のない人生。少なくとも、周囲からはそう見えている。
けれど、つむぎ自身は、自分の人生に小さな違和感を抱き始めていた。
「私の好きなものって、何だろう」
そう思いながらも、彼女には「これがしたい」と言えるものが何もなかった。
そんなある日、つむぎは一人の女性と出会う。
芸術大学に通う21歳の女、湯来琴葉。
自由奔放で、好きなものを好きだと言い、誰にも縛られずに生きているように見える琴葉に、つむぎは強く惹かれていく。
「現代美術って、よく分かんないんですよね」
「分かろうとしないから分かんないんだよ」
「美術って、意外と自由?」
「意外も何も、芸術全般、自由が動力源さ」
琴葉と過ごすうちに、つむぎの世界は少しずつ変わっていく。
知らなかった絵具のこと。
知らなかった街のこと。
知らなかった人たちのこと。
そして何より――自分自身のこと。
しかし、自由に生きているように見えた琴葉もまた、あるものに囚われていた。
『傑作』を描くという、たった一つの夢。描いても描いても、自分の納得する作品には届かない。それでも琴葉は、「いつか描ける」と言い続けながら、キャンパスと時間を浪費していく。
親に決められた人生から抜け出せないつむぎ。
自分自身が作り上げた理想から抜け出せない琴葉。
二人は互いに、自分にはない「自由」を持っていると思っていた。
けれど、2人が互いに与えたのは自由ではなかった。ただ、自分たちの停滞を肯定する理由だった。
このままでいいのだろうかという思いを抱えつつ、行動することもなく、無限に続く【今】を生き続けていく。
そうして2人の大学生活は、少しずつ、確実に腐っていく。