あらすじ

「三月ともたない男だ。喪服を持って嫁げ」 父はそう言って、黒い服を私の膝へ放った。寡婦料が目当てだ。 私はイルメラ、二十八歳。子爵家の長女で、王都の薬種商で八年、薬を量ってきた薬師だ。 嫁いだ夜、寝台の伯爵は言った。 「妻を娶っても、三月で寡婦にするだけだ。喪服は持ってきたか?」 「持ってまいりました。箪笥の底に入れます。喪服の出番は、百年先ですわ」 翌朝、枕元の薬を舐めた。舌が痺れる。鳥兜だ。届けたのは、家督を継ぐはずの弟。 「承知しました。では、看病いたします」 三日目、伯爵は自分で匙を持った。十日目、伯爵は窓辺まで歩いた。弟の薬は、弟の前で弟に差し出した。 ひと月目、父の手紙が来た。喪はいつだ、と。伯爵は言った。「お前が来てから、死ぬのが惜しい」 三月目の春、喪服は父へ送り返した。 「喪服でしたら、お父様へお返ししました。私が着るのは、百年先ですわ」 喪服を持たされた薬師の花嫁が、死ぬはずの夫を生かす話。

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カクヨム
カクヨム2026/09/04
  • 現在の作品「三月ともたない男だ。喪服を持って嫁げ」と父に言われましたので、喪服は箪笥の底へ、旦那様は百年先まで生かします――三月目の春、喪服はお父様へお返ししました