あらすじ
ハーディング伯爵夫人リディアは、夫グレアムから突然離縁を申し渡される。理由は、ほかに妻にしたい女性ができたから。
十年間の結婚生活を終えること自体に、リディアは反対しなかった。ただし、一つだけ整理しなければならないものがある。
「離縁は承知しました。では明日から、領地の水道魔法料をお支払いください」
水不足に苦しんでいたハーディング領。その井戸、水路、浄水設備を設計し、十年間維持してきたのは、一級魔導技師でもあるリディアだった。
しかも設備の特許は彼女の実家が所有し、維持費までリディア側が負担していた。
妻だから無償だった。妻でなくなるなら、通常の契約に戻す。
水を止めるつもりも、領民を困らせるつもりもない。ただ、自分の仕事に正当な対価を求めるだけ。
ところが夫は、妻が十年間どれほどの仕事をしていたのか、離縁を決めるまでほとんど知らなかった。
夫婦という関係を終えた一人の魔導技師が、自分の仕事と人生の価値を取り戻していく物語。