あらすじ
町外れで小さなパン屋「麦のひだまり」を営むミナは、店の規模を理由に、町一番のパン職人バルドから見下されていた。
ある秋、領主の屋敷で開かれる収穫祭に町中のパン屋が招待されるが、ミナのもとにだけ招待状が届かなかった。実は、バルドが「あんな小さな店では場違いだ」と役人に話したため、招待先から外されていたのだ。
ところが祭りの前日、屋敷で用意していたパンが雨にぬれてしまう。困った料理番から百個のパンを頼まれたミナは、その無理難題を引き受ける。事情を知った町の人々も次々と集まり、小さな店で力を合わせて百二十個のパンを焼き上げた。
祭りでミナのパンは領主や町の人々から高く評価される。一方、バルドの言動も明らかになり、それまで彼の店だけが担当していた屋敷への納品は、町のパン屋が交代で行うことになった。
自分の考えが間違っていたと気づいたバルドは、やがてミナの店を訪れる。素直に謝ることはできなかったが、互いの技術を交換しながら、二人は新しいパンを共同で作り始める。
小さな店の温かさが町の人々を結び、頑固だった職人の心まで少しずつ変えていく、焼きたてパンの香りに包まれた物語。