あらすじ
ベルギー・ゲントを舞台にした20代30代女性向け国際恋愛の短編小説。
前後編で完結する読み切り作品です。
十一月上旬、日本から一人でベルギーを訪れた29歳のユリは、ゲントで一週間を過ごしていた。転職を決めた直後なのに、本当に辞めてよかったのか答えが出ず、「旅行から帰れば考えればいい」と問題を先送りしている。
ある夕方、運河沿いのベンチで彼女は現地の家具修復師ルカと出会う。きっかけは事故でも迷子でもない。ユリが座ろうとしていた席を、ルカが「あと三分だけ空けてほしい」と頼んだからだった。毎晩同じ時刻、向かいの古い建物にだけ一瞬現れる光を確認しているという。
最初は不可解に思ったユリも、翌日、その光の理由を偶然知る。そこから二人は、昼とは違うゲントを一緒に見て歩くようになる。運河船、石畳の路地、温かい食事、聖ミカエル橋。会う約束を重ねるほど、ユリにとって「帰るまでの旅行」だった一週間は、「この人と明日も歩きたい時間」へ変わっていく。
そして最終夜。ゲントの特別な夜間照明が午前0時に消える前、ルカは橋を渡るかどうかをユリ自身に選ばせる。