あらすじ
特別なことなど何もない、どこにでもいる会社員、三澤悠斗。
彼の一日は、上司の声から始まる。
Web会議。資料修正。叱責。沈黙。
そして、ミュートを示す赤い斜線。
その日、三澤は心の中でだけ呟いた。
死ねばいいのに。
声には出していない。
チャットにも書いていない。
誰にも届くはずがなかった。
だが、その沈黙は、送信されていた。
画面の奥に黒い柱が現れ、上司は水のない部屋で溺れるように消えた。
会議ログに残されたのは、存在しない参加者と、不明な接続記録。
『参加者が一名、増えています』
『接続先不明』
翌朝、情報システム部の榎本怜司は、異常な会議ログの調査を命じられる。
参加者は二名。
三澤悠斗と、黒崎徹。
しかし、通信記録は三つあった。
名前のない参加者。
存在しない接続先。
終了しない勤務状態。
そして、声に出されなかったはずの言葉。
社内チャット、Web会議、勤務ログ。
社員をつなぐための仕組みは、いつの間にか別の何かへつながっていた。
これは復讐ではない。
呪いでもない。
誰かの願いでもない。
押し殺された怒り、疲労、憎悪、沈黙。
それらを受け取り、応答するものがいる。
会議はまだ終わっていない。
そして、参加者はまた一名、増えている。