あらすじ
戦争のない世界では、ロケットは生まれなかった。
その代わり、人々は百年をかけて海底に光路網を築き、世界をひとつに結んだ。
そしてある日、世界各地の代表たちは、新たな計画を発表する。
――地上から、空へ。
――空から、軌道へ。
ロケットのない世界で、どうやって宇宙へ行くのか。
答えは、ひとつずつ積み上げることだった。
海の道。
世界を結ぶ光路網。
空に留まる足場。
軌道拠点。
そして、地上へ降ろされる一本の糸。
その建設地に選ばれたのは、赤道直下の小さな島だった。
島で暮らす少女、ナーラは、最初はただ遠くから建設を眺めていた。
潮の匂い。
風の向き。
波の音。
島の人々が昔から知っていた「見えない道」と、世界が作ろうとしている「宇宙への道」が、少しずつ繋がっていく。
やがてナーラは、その道を最初に渡る一人に選ばれる。
誰も行ったことのない場所へ。
誰にも、怖さを尋ねることのできない場所へ。
これは、宇宙へ行く少女の物語であり、
百年かけて一本の道を作った人々の物語。
見えない道を、みんなで渡ってきた。
――これは、地上から宇宙へ架かる、人類最初の梯子の物語。