あらすじ
「無能」と蔑まれ、妹の身代わりとして北方の“氷の公爵”レオンへ嫁がされたクレア。そこで彼女が出会ったのは、冷酷な怪物ではなく、呪いに身体を蝕まれながらも領地を守り続ける孤独な青年だった。
ある夜、死にかけたレオンを前にクレアが流した一滴の涙が、彼を覆う氷を溶かす。
けれど、涙はいつでも効くわけではない。無理に泣いても、悲しい記憶を思い出しても、氷は溶けなかった。
それでもレオンは彼女を治療道具にしようとはしない。
「妻は薬ではない」
役に立つことでしか自分には価値がないと思っていたクレアは、初めて自分自身を守ってくれる人を知り、やがて二人は政略ではなく互いの意思で未来を望むようになる。
ところが、幸せを願うほどレオンの身体は激しく凍り始める。
なぜ彼は未来を望むことを恐れるのか。
なぜクレアの涙だけが、凍った心へ届くのか。
やがて明らかになるのは、誰かにかけられた呪いではなく、レオン自身が過去の罪悪感から選んだ「未来を捨てる誓い」。
失ったものは戻らない。
傷ついた過去も消えない。
それでも二人は、互いを救うために自分を犠牲にするのではなく、過去を抱えたまま「明日を生きたい」と願うことを選んでいく。
これは、泣かない令嬢と凍える公爵が、もう一度未来を信じられるようになるまでの物語。