あらすじ
文章の大半が生成される時代になった。遺言や告白のように、本人が書いたことに意味を持つ文書には、人力証明が要る。僕はその鑑定をしている。神保町の雑居ビルの三階、看板は出していない。
持ち込まれたのは、亡くなった老人が残した便箋三枚。娘は言う。兄が、父はこんなことを言うはずがないと言っている、と。 判定器の数値は、〇・五一で止まった。人間とも、機械とも判定できない数字だった。
文体鑑定人・戸川のもとには、いつも「誰の言葉か」がひとつに決まらない文書ばかりが来る。
連作短編。第一話「書取(かきとり)」。