あらすじ
祖母の葬式を終え、六十年続いた銭湯「夕凪湯」を閉めるはずだった夜。無能力の元インフラ技術者・久世湊の前へ、血まみれのS級ダンジョン配信者・黒瀬美波が女湯から落ちてきた。
壊れたはずの温泉は、迷宮侵蝕も致命傷も洗い流す。しかし入浴料は四百八十円。撮影禁止。王様もゴブリンも順番を守る。戦場へ戻りたくない客を、無理に帰してはならない。
やがて夕凪湯の赤い暖簾は、世界百八か所のダンジョンへ出現する。政府は管理を求め、巨大企業は三十億円で買収を持ちかけ、月額百万円の会員制セーブポイントまで建設される。一方、最強探索者の美波は帰還するたび、「帰るために必要な記憶」を失っていた。
人を救う力を持たない湊ができるのは、湯を沸かし、番台に座り、帰ってきた者へ「おかえり」と言うことだけ。だが世界を救う最後の仕組みは、最強の剣でも課金ランクでもなく、誰かが待ち、交代しながら約束を守り続けることだった。
現代ダンジョン配信×銭湯経営×お仕事ファンタジー。非戦闘職の主人公と、帰る場所を持たない最強ヒロインが、種族も身分も越えた“世界の帰還地点”を作る完結長編。