あらすじ
「撃てるものなら撃ってみろ。俺は神に選ばれた勇者だぞ」
「はい。撃てば、当たります。当たれば、死にます。
……だから、撃たないんです」
神谷シン、二十五歳。前世は要人警護官だった。
一番強い人間ではない。
一番死にたくない人間だ。
死にたくないから。
誰にも死んでほしくないから。
死なないための努力だけを、ひたすら積み上げてきた。
転生先で彼が手にしたのは【シークレットサービス】。
守ると決めた相手のためなら、何でも取り出せる。
──ただし、自分のためには何ひとつ出せない。
流れ着いたのは、貧乏でうるさいポポロ村。
肩書きは自警団員。月給二十五万円。
仕事は、村の全員を今日も生かして帰すこと。
村には、もやしを啜りながら夢を諦めない人魚のアイドル志望と、
血を吐きながら他人を治す二十歳の村長がいる。
そして村の外には、人が死ぬほど数字が伸びると知っている「勇者」がいる。
シンはいつもおどおどしている。
悲鳴を上げ、頭を下げ、心配しすぎて煙たがられる。
けれど、覚悟が決まったときだけ、声が変わる。
「止めておいた方がいいですよ。
僕、撃ったら外さないので。
……ね? 痛いのは嫌でしょう? 止めましょう?」
それは懇願ではない。最後通告だ。
これは、一番死にたくない男が、
一発も撃たずに、誰も死なせない用心棒になるまでの物語。