あらすじ
岩手の田舎で農業と養鶏を営む、四十八歳の牧野豊。
ある朝、妻に起こされて鶏舎へ向かうと、六十三羽の鶏がイタチに全滅させられていた。
原因は、豊が「まだ大丈夫だべ」と交換を後回しにしていた一枚の古い板。
アンナ。のぶすけ。めぐ。五郎。
昨日まで元気だった鶏たちは、もう戻ってこない。
「……次は絶対入れねえ」
豊は古い鶏舎をすべて作り直すことを決める。
しかも使うのは、普通の建材ではない。
九年ぶりに冒険者へ復帰し、ダンジョンから自分で材料を集めることにした。
蜘蛛の魔物から採れる丈夫な糸は、防獣ネットへ。
岩窟ダンジョンの石は、掘られても壊れない基礎へ。
トレントの木材は、腐りにくい柱へ。
普通の冒険者なら武器や防具にする素材も、豊が見るのはいつも一つ。
「これ、鶏舎に使えねえか?」
娘から借りた装備と魔法の鞄を手に、Lv.1から再出発。
ついでに始めたダンジョン配信では、魔物より建材に喜ぶ姿がなぜか少しずつ注目されていく。
これは、鶏を守りたい田舎のおじさんが、
ダンジョン素材を集め、レベルを上げ、DIYを重ね――
気づけば誰も突破できない“最強の鶏小屋”を作ってしまう物語。