あらすじ
ダンジョン出現から十五年。探索者の派手な戦闘が注目される一方、その安全を支える保守職は「戦えない外れ職」と軽んじられていた。
三十二歳の元ビルメン・宮前直人も、F級職《保守士》を理由に民間保守会社を解雇される。ところが退職当日、世界最難関迷宮で崩壊事故が発生。逃げる人波の中、宮前が気にしたのは壁の震え、異音、熱、流れの偏りだった。
「元栓はどこですか。閉めてきます」
本人にとっては、危険を止め、原因を切り分け、必要な資材と人員を揃える、いつもの設備仕事。だが彼の現地確認と応急復旧は、戦闘の専門家だけでは止められなかった災害を食い止め、その記録は想定外の形で広がっていく。
成果は成果として受け取る。それでも宮前は、自分の仕事が世界でどれほど希少かだけは分かっていない。
やがて市営迷宮の保全班に迎えられた宮前は、戦う者、危険を分析して停止を決める者、現場を記録する者たちと共に、応急処置だらけの現代ダンジョンを一つずつ立て直していく。
これは、最強の攻撃ではなく、点検、停止、引継ぎで世界を守る、現代迷宮お仕事ファンタジー。