あらすじ
長州藩邸に影のように潜み、桂小五郎のためだけに刃を振るってきた忍びの女・白藤。
主の命に従い、夜に紛れ、名も想いも胸の奥へ沈めて生きてきた彼女だったが、敵の網が桂へ迫るなか、ついに“守るための別れ”を告げられる。
置いていかれることだけは、どうしても耐えられない。
幼い日の喪失を胸に抱えた白藤は、初めて主へ手を伸ばし、声にならなかった願いを零す。
――私を一人にしないでください。
影として生きてきた女と、志のために情を押し殺してきた男。
近づいてはならなかった二人が、長い夜の果てにようやく辿り着くのは、忠義ではなく、ただひとつの恋だった。
藤の花が静かに揺れる京の夜、秘め続けた想いがほどけていく、切なくも甘い和風恋物語。