あらすじ
舞台は、秒単位で移り変わる流行と効率がすべてを支配する、大手レストランチェーンの新メニュー開発室。
誰もが液晶画面に噛みつき、自分を過酷にアップデートし続ける戦場のようなオフィスで、
窓際の事務職・吉原凪(よしわら なぎ)だけは、いつも静かに背筋を伸ばし、数世代前の分厚い「化石スマホ」を愛用していた。
周りがどんなに焦り、怒号を飛ばしていようとも、彼女の周りだけは時間が止まっている。
お昼休みになれば、一人でトコトコと隅田川沿いのベンチへ向かい、自分で作った地味な卵焼き弁当を広げ、古い水筒から温かい緑茶をずずっとすする。
周囲から「空気の読めない変人」「お荷物」と煙たがられる彼女が、焦燥にかられる同僚たちへ、悪意も嫌味もなく、ただ純粋に放つ言葉——
「それって、変わらないとダメですか?」
日々、変わり続ける社会に自分を合わせて生きる人たちが、吉原凪のその『変わらなさ』に振り回され、感情を爆発し炎上させる。