あらすじ
水瀬ひより、26歳。
広告・デジタルコミュニケーション会社「RELACT」で、コミュニケーションプランナーとして働く彼女は、仕事も友人関係も、一人で過ごす時間もそれなりに充実していた。
そんなある日、新たに担当することになった地域文化資産のプロモーション事業。その取材候補者の中に、見覚えのある名前を見つける。
――五条優雅、42歳。
寺の住職であり、音楽を作り、小説も書く少し変わった男。
親友・結の夫である湊が、かつて何度も人生について相談していた相手でもあった。
以前から顔は知っている。
けれど仕事を通して再会したひよりは、これまで知らなかった「五条優雅」という一人の人間に触れていく。
人の答えを無理に求めない、ひより。
誰かに答えを与えるのではなく、問いを渡してきた優雅。
似たところのある二人は、いつしか仕事が終わっても話し続け、理由のない連絡を交わすようになる。
やがてひよりは、自分の中に生まれていた気持ちに気づく。
――私、五条さんが好きなんだ。
そして優雅もまた、ひよりへの想いを認める。
しかしその瞬間、二人の間にある「16年」という時間が、彼の前に現れる。
42歳と26歳。
仕事も、結婚も、家族も、その先の人生も。
未来のことを考えるほど、優雅はひよりのために距離を置こうとする。
一方のひよりも、彼から何も言われないのなら、それが答えなのだと思ってしまう。
相手の気持ちを尊重して、待つ。
それは二人が大切にしてきた優しさだった。
けれど――。
待っているだけでは、届かない想いもある。
未来がどうなるかなんて分からない。
年齢差がなくなるわけでもない。
この恋がどこへ辿り着くのか、二人ともまだ答えを持っていない。
それでも、今伝えられることがある。
「私は、五条さんが好きです」
「俺は、ひよりといたい」
これは、相手の答えを待っていた二人が、
自分の答えを自分の言葉で、大切な人へ渡すまでの物語。
『卒業の日から始まった、二人の指輪物語』から一年後――。
答えを持たない、新しい恋が始まる。