あらすじ

「氷の王子」
——それが、この国の第一王子であるレオンハルトにつけられた異名だった。

冷酷無比で感情の起伏を見せず、政治においても戦場においても一切の容赦がない。

そして何より、彼は人間ではない。

王家に時折発現する「龍族」の濃い血を引いており、すでに数百年という途方もない時間を生きている。

彼にとって、人間の短い一生など瞬きのようなものだった。

その日、レオンハルトは深い森へ視察に訪れていた。

鬱蒼と生い茂る木々の隙間から差し込む光の中、彼の鼻腔をある匂いがくすぐった。

それは、何百年も凪いでいた彼の魂を激しく揺さぶる、甘く、それでいて狂おしいほどの引力を持った匂いだった。

(……番、か)

龍族にとって「番(つがい)」は絶対の存在だ。

本能が惹きつけられるままに森の奥へ進むと、苔むした大樹の根元に、それはあった。

淡い真珠色に輝く、美しい模様が刻まれた大きな卵。

レオンハルトはひざまずき、そっとその卵に触れた。

かすかな温もりと、中に宿る小さな命の鼓動が伝わってくる。

間違いない、この中にいるのは自分の運命の番だ。

氷のように冷たかった彼の赤い瞳に、初めて熱い執着の火が灯った。

彼は自分の外套を脱ぎ、卵を大切に包み込むと、誰にも触れさせまいと自らの腕で抱えて城へと帰還した────。

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アルファポリス
アルファポリス2026/09/03
  • 現在の作品孵化した私ですが、お父様の過保護が止まらない?!