あらすじ
四十九歳の執事長、ヴァレリアン・オーギュスト。
伯爵家に三十年仕える完璧な執事である彼には、誰にも知られていない前世があった。
それは科学捜査研究所、通称『科捜研』の職員。
ある日、伯爵家で殺人事件が発生する。
騎士が凶器を素手で掴もうとするのを見て、ヴァレリアンは静かに告げた。
「その凶器に、触れてはいけません」
この世界には指紋採取も、血痕検査も、鑑識という概念すら存在しない。
見えない痕跡こそ、犯人を特定する証拠になる。
だが、証拠を調べる道具がない。
ならば、科学の目を作ればいい。
植物油から煤(すす)を作り、灰からアルカリ水溶液を作る。
そして科学の真理を追い求める錬金術師ロザリンドと出会い、二人はこの世界に存在しない科学捜査の技術を一つずつ再現していく。
指紋捜査。
ルミノール反応。
毒物の抽出。
事件を解決するたび、異世界には新しい『科学』が生まれていく。
これは、仕事には一切妥協しない四十九歳のイケオジ執事が、前世の科学知識と執事の矜持を武器に、科学も鑑識もない世界に、『科学捜査』という新しい常識を作り上げていく物語。