あらすじ
紹介文
ある日、世界から「母親」という言葉が消えた。
辞書にもない。
教科書にもない。
検索しても出てこない。
誰も、その言葉を知らない。
けれど、母親だった人たちは消えていなかった。
子どもを産んだことも。
眠れない夜を過ごしたことも。
熱を出した子を看病したことも。
その小さな手を握ってきたことも。
すべて覚えている。
ただ――自分が「母親」であることだけを知らない。
そしてなぜか、俺だけがその言葉を覚えていた。
そんな俺のもとに、見覚えのない通知が届く。
《保持を確認しました》
世界では少しずつ、人と人を結びつけていた「何か」が失われていく。
母親。
家族。
記憶。
それでも、人は誰かを守ろうとする。
理由さえ、分からないまま。
では――
私たちは、何をもって誰かを「愛している」と言うのだろう。