あらすじ
この世界では、季節によって色の見え方が変わる。
春はパステル、夏は鮮やかに、秋はセピアに。そして冬になると、世界からすべての色が失われる。
人気アイドルグループに所属しながら、なぜか自分だけ人気が出ない本條巽。
ライブを終えた冬の夜、落ち込んで街を歩いていた巽は、不思議な花屋「桜屋」と出会う。
そこに並ぶのは、冬には色など見えるはずのない花々。
店主は、花に宿る「花言葉」の力を引き出し、人々の願いを後押しする“おまじない”として顕在化させることができるという。
そして目の見えない老女・蛍は、その人が本当に必要としている花を選ぶことができた。
恋を叶えたい人。
一歩を踏み出したい人。
大切な誰かを想う人。
桜屋を訪れた人々は、自分だけの花に選ばれ、少しずつ人生を動かしていく。
――なのに、巽だけはいつまで経っても花に選ばれない。
なぜ、自分には花がないのか。
そもそも、この不思議な花屋は一体何なのか。
そして、なぜこの世界は冬になると色を失うのか。
色のない冬の片隅に佇む、不思議な花屋をめぐる幻想譚。