あらすじ
王都で葬送師として働くエルナには、前世の記憶がある。
前世の彼女は、死者を棺へ納め、遺族を見送る葬儀屋だった。
そんなエルナのもとへ、ある夜、一人の令嬢の遺体が運び込まれる。
ヴィオラ・レインフォード公爵令嬢。
聖女を虐げた『悪役令嬢』として王太子から婚約を破棄され、その夜、自ら命を絶った――とされる少女だった。
王宮からの命令は一つ。
「夜明けまでに火葬せよ」
だが、死化粧を施そうとヴィオラの身体に触れたエルナは、おかしなことに気づく。
死後硬直がない。
死斑もない。
そして――ほんのわずかに、脈がある。
「……この方、死んでいません」
ヴィオラは死んだのではなかった。
“死んだように見える薬”によって、身体の自由も声も奪われたまま、棺へ入れられていたのだ。
そして意識を取り戻した彼女は告げる。
「私は、自害などしていません」
誰が彼女を『死者』にしたのか。
なぜ、これほどまでに火葬を急ぐのか。
ヴィオラの兄アルフレッドとともに調べ始めたエルナは、やがて彼女の死と、王都で繰り返されてきた『聖女による死者蘇生の奇跡』が、奇妙な一本の線で繋がっていることに気づく。
ならば――予定通り、葬式をしよう。
棺の中身が生きていることだけを、犯人には秘密にしたまま。
これは死者を送り続けてきた一人の転生葬送師が、生きたまま葬られようとした『悪役令嬢』を棺から取り戻し、彼女を死者にした者たちへ最高の葬式を返す物語。