あらすじ

現代日本の税理士・相馬啓介が目を覚ましたのは、明治・大正時代を思わせる魔法文明国家「瑞穂皇国」の処刑台だった。 しかも転生した身体は、飢饉に苦しむ村へ送られるはずだった救済米一千俵を横領し、今まさに絞首刑となる悪徳徴税官・相馬圭介のもの。 身に覚えのない罪を訴えても、証人も領収書も、すべてが彼を犯人だと示している。ところが啓介は、押収された帳簿と輸送記録に一つの矛盾を見つける。 一千俵を運んだとされているのに、使われた馬車はわずか十二台。 どう積んでも、計算が合わない。 「米は途中で盗まれたのではありません。最初から、この町に届いていなかったんです」 転生とともに得た能力《貸借照合》は、帳簿、契約書、現物を突き合わせ、その矛盾を赤く浮かび上がらせる。しかし、犯人の名前も正しい答えも教えてはくれない。真相へ辿り着くには、自ら現場を調べ、人の嘘を見抜き、法の穴を塞がなければならなかった。 処刑の猶予を勝ち取った啓介を監視するのは、徴税官を憎む没落令嬢で元新聞記者の御厨いろは。彼女の実家は、圭介の理不尽な徴税によって酒蔵も爵位も失っていた。 「あなたが本当に別人だというなら、数字ではなく行動で証明してください」 反発し合う二人は、救済米事件を皮切りに、掘っていない鉱石への課税、存在しない鉄道会社への巨額投資、奇跡の陰で膨らむ教会の免税献金を追う。個々の不正は、やがて皇国全土を覆う巨大な裏帳簿へつながっていく。 その最奥にいるのは、清廉な財政再建の英雄として支持される大蔵卿・有馬征一郎。そして、まだ生まれていない国民の命を担保にした秘密勘定《未来勘定》だった。 真実を公表すれば、国家が滅びる。隠し通せば、未来の民が支払い続ける。 これは、一人の税理士とすべてを失った令嬢が、剣ではなく帳簿を武器に、冤罪と不正、そして帝国そのものの決算に挑む物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/09/03
  • 現在の作品処刑台の税理士 ~悪徳徴税官に転生した俺、没落令嬢と帝国の裏帳簿を暴く~