あらすじ
寝て起きたら、そこは知らない荒野だった。
どう見ても異世界。
けれどハルトは深く考えなかった。
「まあ夢だろ。なら一回くらい、最強魔法ってやつを撃ってみるか!」
軽い気持ちで放った一撃は、大地を吹き飛ばし、地平線の彼方まで爆風を走らせ、後に世界史へ刻まれる巨大災害《天穿》を生み出した。
「……ちょっとやりすぎたかも」
翌朝になっても夢から覚めなかったことで、ようやく事態の深刻さを理解したハルトは決意する。
本気は封印。
せっかくの異世界なのだから冒険者になって、可愛い異種族の女の子たちとパーティを組んで、楽しく自由に生きよう。
ところが現実は、そんなに甘くなかった。
新人。
身元不明。
しかもソロ。
ギルドからろくな依頼すら紹介してもらえず途方に暮れていたハルトの前に現れたのは、巫女装束に狐耳を揺らす、とんでもなく押しの強い少女。
それを皮切りに集まってくるのは、未来の悪いことばかり見える黒エルフ、力加減ができない竜人、倫理観が少々墓地寄りな死霊術師。
誰もが普通のパーティではうまくやれなかった者たちだった。
沼に落ちれば仲間も引きずり込み、高級品を壊せば全員で責任を押しつけ合い、依頼へ行けば予定通り終わったためしがない。
世界を壊せるハルトですら、この仲間たちだけはどうにもならない。
けれど彼らはまだ知らない。
魔法と機械と呪術が混在するこの世界で、奴隷、格差、戦争、失われた古代文明、天上人、そして歴史から消された種族の秘密が静かに動き始めていることを。
そして、ハルトが気まぐれで開けた「あの大穴」が、世界の終わりへと続く扉だったことを。
笑って、喧嘩して、泥だらけになって。
それでも本当に誰かが泣いている時だけは、絶対に置いていかない。
これは世界最強の男の物語であり、
本来なら決して出会うはずのなかった仲間たち全員が、主人公になる物語。
世界史に残る大災害の犯人は今日も知らない顔をして冒険中。
《天穿》の話題が出るたび、心の中でただ一言。
――ほんとすみません。