あらすじ
高校時代、遠藤孝明には誰よりも速く走る恋人がいた。
同じ陸上部の千晶。
誰もが彼女の未来を疑わなかった。
――あの日までは。
十八歳の夏。
部活帰りの事故で、千晶は片脚を失った。
走ることも、描いていた未来も失った彼女を、孝明は支えようとした。
けれど、十八歳の彼には、その現実はあまりにも重すぎた。
傷つけ合い、すれ違い、
やがて孝明は千晶から逃げるように故郷を離れた。
それから十二年。
東京での生活に疲れ果て、三十歳になった孝明は故郷へ帰ってくる。
そして、千晶と再会する。
十二年前、走ることを奪われた千晶。
十二年間、彼女から逃げ続けてきた孝明。
かつて同じ道を走っていた二人の時間は、
あの日から止まったままだった。
失ったものは戻らない。
あの日に戻ることもできない。
それでも二人は、ぶつかり、傷つけ合いながら、
止まっていた時間を動かすように、もう一度走り始める。
目指すのは、故郷で開かれる市民マラソンのゴール。
これは、壊れてしまった二人が、
もう一度誰かと走ることを選ぶまでの物語。