あらすじ

預かった鍵の山谷を蜜蝋へ写す錠前師イングリッドは、その癖を「客前でみっともない歯型遊び」とネイサンに笑われ、婚約も工房も失った。辺境の山荘で臨時職人となった彼女は、無愛想な侯爵ルカーシュが用意した温かい三食も、鍵の掛かる私室も、腕を買われた職務上の厚遇だと思っていた。 ところが火災が起こり、ルカーシュが施錠された書庫の奥に取り残される。正鍵へ続く廊下は炎の中。頼れるのは、熱で軟らかくなり始めた蜜蝋歯型控えだけだった。 「一山、二谷、三度寝禁止」 傷つく指で合鍵を削り出した彼女を待っていたのは、ネイサンの評価訂正と復職の申し出、そして侯爵が差し出す二本の鍵。 「二本目はどこの錠ですか」 「私室だ」 「夜間修理用ですね?」 求婚を業務命令だと思い込む錠前師と、ついに声を上げて笑った侯爵の、すれ違い婚約寸前のお話。

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小説を読もう2026/09/03
  • 現在の作品合鍵の歯型なんて無駄だと笑われましたが、火の回った書庫で侯爵様を救えたのはその無駄でした