あらすじ
「出口ばかり気にする陰気な女は、王妃に向かない」
「婚約はお返しいたします。ですが、あの扉だけは塞がないでください」
「……最後まで、それか」
建国祭の舞踏会で、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エレノア。だが彼女が案じたのは、恋敵でも名誉でもなく、白薔薇の花台に塞がれた四つ目の扉だった。
十二歳で、開かない非常扉の前に母を失って以来、彼女はどこでも出口と歩数を数えてきた。嘲笑されても、招待客三百二十七人全員の帰宅を見届けるまでは去らない。
やがて薄絹に火が移り、内開きの正面扉へ人々が殺到する。悲鳴と煙に包まれる広間で、エレノアは王太子妃教育で得た声を張り上げた。
「正面へ走らないでください!」
彼女の判断を信じた近衛副団長アルノーと、四つ目の扉を開く。だが、数えた顔が二つ足りない。単身で逃げた王太子と、炎の中に残されたセシリアだった。
これは、壁ばかり見てきた令嬢が三百二十八番目に自分を見つけ、その視線の意味を知る人と、同じ出口を数えるようになるまでの物語。