あらすじ
「なろう系は終わった」と言われることがある。しかし、実際に「小説家になろう」や「カクヨム」で読んだり書いたりしていると、昔ほどの勢いはなくなっていても、異世界転生、追放、ざまぁ、無双、悪役令嬢、スローライフといったテンプレートは今も残っている。
では、なぜ「なろう系」は消滅しないのか。
本作では、その理由を「テンプレートそのものが消えるのではなく、形を変えて残っていくからではないか」と考察する。
異世界転生のように、同じ入口から政治、戦争、恋愛、コメディ、成長物語など多様な作品へ広げられるテンプレートがある一方、現代ダンジョンや外れスキル系のように、意識して変化を加えなければ似た構造へ収束しやすいテンプレートもある。
そこから、「テンプレートには寿命がある」というより、「同じ出口しか作れなくなったテンプレートが古く感じられるのではないか」という考えに至る。
さらに、主人公が評価される、無双する、といった読者のカタルシス自体が古くなったわけではなく、その見せ方や理由づけが重要なのだと考える。読者の好みが細分化すれば、異世界転生に政治劇を組み合わせたり、追放に人間ドラマを加えたりするなど、ジャンル同士が混ざり合い、新しい作品の形が生まれていく。
その結果、「なろう系」という一つの言葉だけでは説明できない作品が増えていく。それは衰退ではなく、むしろ一つの大きなジャンルが内側から分岐し、更新されている証拠なのではないか。
さらに、Web小説はWeb上だけで完結するとは限らず、書籍化、コミカライズ、アニメ化、ゲーム化などへ広がっていく。そのため、「Web小説サイトの勢いが昔より落ちたこと」と「なろう系作品が商業ジャンルとして消滅すること」は同じではない。
最終的に本作では、「なろう系は終わったのか」と問い続けるのではなく、「なろう系から次にどんな物語が生まれるのか」を見るべきではないか、と結論づける。テンプレートは消えるだけではなく、変形し、別のジャンルと結びつき、次の物語を生み出していくのではないか――という視点から、Web小説のこれからを考える。